街の音色TOP
-------------------------
チェンナイ(南インド)
ブエノスアイレス(アルゼンチン)
ウディネ(イタリア)
ボッハム(ドイツ)
ホルシュタイン(スイス)

トリエステ(イタリア)
チュービンゲン(ドイツ)
パンパネッラ(スペイン)
デュルンシュタイン(オーストリア)
トゥーン(スイス)

ユーリッヒ(ドイツ)
ブルーヒル(アメリカ)
トリノ(イタリア)
エリチェ(イタリア)
リヨン(フランス)

イラクリオン(ギリシャ)
サンタフェ(アメリカ)
グラスミア(イギリス)
ゴールドレイン(イタリア)
グラード(イタリア)

プラハ(チェコ)
クリミア半島(ウクライナ)
ヴェネチア(イタリア)
パドヴァ(イタリア)
バーデン・バーデン(ドイツ)

アバディーン(スコットランド)
トリヴァンドラム(インド)
バリローチェ(アルゼンチン)
リューベック(ドイツ)
バルデモサ(スペイン・マヨルカ島)

アバディーン(スコットランド)
 
 

 

 

 

 

 
     

サワサワと 葉のふれあう音に 歩みを止めて 振り返った。 大きな木の枝が 幾重にも交差して 小路に影をつくる。 キラキラ キラキラ、傾きはじめた太陽の光は 無数のかけらとなって 木々の間から降り注ぎ、まるで万華鏡のようだ。ジャンパーのポケットに手を入れ、足早に追い抜いていく学生たちに道を開け、晩秋の、消え入りそうな陽だまりに 腰をおろした。
 時折吹く 冷たい風に 足元の落ち葉が 眠りから覚めたように踊りだし、空から舞い降りる 新入りを迎えて 輪を作る。 一瞬のざわめきと 静寂が繰り返される度、少しずつ 尖ってくる空気が 夕暮れの時刻を引き寄せる。
 スコットランド、オールドアバディーン、キングスカレッジの裏手に広がる公園へ続く道には 一足早く 冬の気配がせまってきていた。陽が落ちる前に 教会の脇の坂を駆け下りた。 シートン公園には 同じ太陽とは思えないほど、暖かく やわらかい匂いが満ち溢れ、色とりどりの花と戯れる子供たちに、優しい時間を残してくれている。 見上げると 教会の2つの塔が 夕日をあびて 眩しそうに輝き、その身体を 夕闇が包みこむのを待っていた。 急速に冷えていく風に追われるように 木々の影が薄れていく。 コートの襟を 少しおさえ、もと来た坂を上りながら振り返ると 大きな枝が手を広げ、公園の わずかに残った温もりを 逃すまいとしているような気がした。



Copyright 2003-2011, Ikuko Miura all rights reserved.