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トリヴァンドラム(インド)
バリローチェ(アルゼンチン)
リューベック(ドイツ)
バルデモサ(スペイン・マヨルカ島)

サンタフェ(アメリカ)
 
 

 

 

 

 

 
※写真はイメージです

  夕暮れが近づく頃、ふと 空気に膨らみを感じるときがある。 
窓をかすめて 奥のほうにまで夕日が入り込み、部屋全体が 大きく息を吸い込むその時刻。 一瞬の光景を見るために 迷っている時間はない。
すぐさま 車に飛び乗り、蛇行した細い道を 小高い丘へむかって駆け上がる。
まるで 山が焼け、雲に火が燃え移ったような夕焼けを背にあびて その瞬間をつかまえるまでの 短いカウントダウン。 乾ききった砂と石ころをまきあげながら 突き当たりの崖の上まで来ると ちょうど太陽が山の後ろへ落ちていくところだった。
ニューメキシコ州サンタフェ、荒涼とした茶褐色の大地は その色を失い、しだいに暗い影の中へ引き込まれていく。
車のエンジンを切り、息を整え、ハンドルに寄りかかって その時を待つ。
夕日が小さな赤い点を残して 山の向こう側へ隠れ、ふいに風の温度が下がると、待っていた瞬間は訪れる。 燃えるような夕焼けから 鮮やかな色が抜け落ち、空が赤紫色の雲に覆われるのだ。 幻想的な雲の変化は もう少しと惜しむ気持ちとはうらはらに、ひとつ息をする間にも 闇へと加速し、あたりが 薄暗い静寂と 冷たい空気に満たされるのに時間はかからない。 
昼と夜が交代する 少し秘密めいた間奏曲が終わる頃、砂漠の土に埋もれるように点々と建つ家の明かりが増えていく。 その瞬きを追いかけて もっと深い闇が空を覆いはじめていた。



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