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ブエノスアイレス(アルゼンチン)
ウディネ(イタリア)
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トリエステ(イタリア)
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アバディーン(スコットランド)
トリヴァンドラム(インド)
バリローチェ(アルゼンチン)
リューベック(ドイツ)
バルデモサ(スペイン・マヨルカ島)

ゴールドレイン(イタリア)
 
 

 

 

 

 

 

 窓ガラスがゆれて 強い風が吹きこんできた。 目の前の山が みるみる白くなり、その輪郭を失っていく。 あちこちで雷が鳴り、小さな村は たちまち 雷雲に包まれ、雪解けの水をたたえた小川は 水量を増して 驚く速さで下流へ流れていく。一瞬のうちに変貌した環境に、生命(いのち)あるものは なすすべなく 立ちすくむ他はない。少しでも 角度のある所には 水の筋がいくつもでき、小さく実をつけた木々は 葉っぱを広げて その柔らかい肌を守ろうとする。

 3000m級の山々に囲まれた 南チロル、ゴールドレイン、ここでも 例外なく、突然山の神が荒れ狂う。 アルプスの頂きをかすめて降りてくる冷たい雨は 激しく、速く、斜面を叩きながら去っていき、地肌に水を含んだ山は 濃い緑色に変わっていった。

 いったい何種類の鳥が鳴いているのだろう。 少しあいた窓から 再び弱い陽の光がさしてきたのと同時に、雨宿りしていた鳥たちの声が いっせいに 一面のリンゴ畑に交差する。
 したたり落ちる水滴が まぶしい光を浴びて輝き、花たちも さらに生き生きと 鮮やかな色を放ちはじめる時間、日暮れには まだたっぷり、と言わんばかりの明るい鳴き声を 少し重くなった風が 窓辺に引き寄せてくれた。



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